東北事務研 第1分科会 | ||
「子供の学びを支援する学校経営事務をめざして」 〜 第四次長期研修計画策定に向けて 〜 話題提供者 福島県双葉郡楢葉町立楢葉中学校 主 査 石 田 孝 明 |
1.は じ め に
国レベルでは教育改革に関する法整備が終盤を迎え、地方が特色を生かした教育改革をいかに進めるかの第2ステージに移っている。福島県でも、平成14年度よりTT、習熟度別指導を組み合わせた方式により小学校並びに中学校1学年に30人学級が導入された。また、第7次定数改善では、「きめ細やかな学習指導や教育の情報化の支援等のため事務部門の強化対応」との新たな役割が学校事務職員に課せられている。
このような変革の中で、学校の権限強化に伴う説明責任を果たし、開かれた学校、特色ある学校づくりを進めるためには、学校の業務である学校教育を支援するための学校経営事務のウエイトが大きくなると考える。
しかし、現実には自主自律を進めるために重要であると考えれらる学校管理規則を考えても、県内一般に従来のものを一部手直しした程度で済ませており、とても特色ある学校づくりを推進しようとする体制にまだなっていないのが現状である。
平成13年度福島事務研研究大会では「自己の意識改革」を目指して、各分科会や全体会、記念講演を設定した。しかしアンケートの結果では「意識が変わった」との回答が6%程度であり、会員の多くが現大会テーマ継続を望んでいる現状から見て、学校事務職員自体の意識を変えることも容易ではないと考える。
このような状況の中で、福島事務研が平成18年度から取り組もうとしている第四次長期研修計画を策定するにあたっては、教育をとりまく社会の変化を見極め、且つ学校事務が有効に機能するような担当者としての学校事務職員の研修とするため、次のようなことを基本としたいと考えた。
・第三次長期研修計画の反省の上に立って目標を設定する(継続性)
・自主研修(県大会)は継続して実施する(研修不足の補完)
・実践を重ね科学的に検証できる研修・研究の場とする(社会に対する説得力)
また、これまでの学校事務像「教育目標具現化への貢献」から一歩進め「教育を支援する学校経営事務」へのステップアップが必要ではないかと考えた。「学校経営事務」とは教育目標の達成に寄与するための事務ととらえ、「学校事務があるから学校事務職員がいる」ことを基本認識とすることが必要である。
2 これまでの研究の成果と課題
福島事務研ではこれまでの研究大会での発表を重ねることにより、1地区の課題解決から全県への課題解決への広がり、事務の標準化等様々な成果を挙げることがきた。しかし、一方では研究発表課題を総務、人事、財務・学務領域としたため、地区で取り組み成果を挙げている研究でなく新たに課題を設定し直するため、十分な研究期間が確保できず研究のための研究に陥りやすかった。そのため、ややもすると研究内容の継続性が確保されず、1回限りの研究に終始してしまう傾向があった。研究の体系化と積み重ねを図り、よりよい成果を見いだしていくことが今後の課題である。
今後は、地区が担当する分科会の研究テーマ設定について、基本領域にこだわらず各地区の自主性を尊重することを基本としながらも、大会テーマやサブテーマが活かされるような工夫が必要であると考える。
(1)総 務
1)経 営 参 画
職が評価されるには、学校事務職員自らの働きかけ(内的要因)と社会からの認識(外的要因) が必要であるが、すべて内的要因からの研究となっている。(事務だより、要覧、パンフレット等)
これからは学校事務経営案等の作成や提示を通して学校経営に参画しようとする意識改革が必要 である。
2)文書・情報管理
文書管理の標準化に関する研究はかなり繰り返されたが、研究成果はなかなか活かされず県内標 準化・統一化までは至らなかった。OA化は情報管理とも深くつながっている。これからはOA化 と併せて情報公開や個人情報保護制度に対応した情報管理システムの研究を深めていく必要があ
る。
3)法規・調査統計・庶務
これらに関する研究発表はなかった。しかし、学校経営に参画するためには法令に基づく法務執 行を正しく理解し、事務処理にあたることは基本である。法制執務の手法とあり方を学ぶ必要があ る。
庶務分野に「連絡調整」がある。これからの学校は、地域と連携したセンター的な機能が求めら れてくる。地域との連携や、学校間連携を深めるための調整的役割を学校事務職員が担うとの視点 での研究も必要である。
総務領域に関するキーワード
・事務組織の確立とシステム化の必要性
・学校運営のための効率的な文書管理事務(収受文書から発議文書管理への転換)
・学校事務総括者としての学校事務職員をめざして
・積極的に学校経営に参画
・情報公開(学校教育の特殊性を配慮した情報公開)
・開かれた学校
(2)人 事
異動に伴う事務引継や給与旅費・福利厚生に関する周知等のマニュアル化に関し、成果があった。 今後法改正に対応したシステム作りが求められる。
服務事務を取り上げた研究は少なかった。給与・諸手当・旅費等の公費支給に関わる基本事務で あり、OA化と関連させた研究も進める必要がある。
人事領域に関するキーワード
・教職員の意識の高揚
・情報の選択
・円滑な事務処理と職員啓発
・定形業務へのパソコン利用
(3)財 務
1)経 理
学校裁量権の拡大との観点から、学校予算のあり方について研究を進める必要がある。OA化に ついては最も進んでいる分野であり成果が挙がっている。(会計処理・備品管理等)今後の課題は 教育目標や経営方針に基づいた予算要求や、透明性のある効果的な予算執行のありかたについて研 究を深め、専門性を高めていかなければならない。また、公費と私費をトータルにとらえ、保護者 負担軽減を考える必要もある。
2)物品・施設管理
物品・施設管理においては、危機管理や安全点検、リサイクルやゴミに代表される環境問題への 対応、学校新改築や大規模改修、統合等への関わりについて教育委員会等と協同して研究を進める ことも必要である。
財務領域に関するキーワード
・学校財務における学校事務職員の役割
・予算の効率的な執行と事務改善
・円滑な備品管理事務(購入〜廃棄までの流れをスムーズに)
・子供が楽しく授業に臨める環境づくり
・パソコン活用による事務処理と研修制度の充実
(4)学 務
これらに関する発表例はない。地方分権に関しての自治事務への移行や、就学指定校・通学区域 の弾力化が進んでいる現在、就学保障との観点から教育委員会と研究を進める必要があると考える。
(5)職務確立
主に第1分科会で研究委員会が担当している。職務内容の明確化は学校事務組織確立の基盤であ る。研究成果として「学校事務標準(案)」がまとまったが、職務標準通知や職の指定により学校 事務職員の仕事を明示することが必要である。そのことにより校務分掌によらない事務処理体制が 確立されると考える。
学校経営に参画し、児童・生徒の学習を支援する学校事務職員像を実現するためには、実務能力 向上や職務遂行能力開発が重要である。これらの能力を身につけるためには「研修・研究基本計画」 に示されている研修の充実が必要となってくる。県教委・市町村・教育センター・研究団体・学校 が相互に連携しこれからの学校事務を展望した研修制度を確立しなければならない。自己啓発や意 識改革を促す研修により学校事務職員すべてがレベルアップしなければならないと考える。
今後も引き続いて第1分科会では、職務内容の明確化に向けた共通理解と、学校に勤務する学校 事務職員の将来像をデザインする場としていきたい。
職務確立領域に関するキーワード
・全体の意識統一
・意識の高揚と教育条件整備に参画できる姿
・体系的で専門的な研修の充実と研究活動の推進
・学校事務標準と学校事務職員の職務標準
・他団体や関係諸機関、学校内での連携協力
・責任と権限
・住民感覚、保護者感覚、プロ感覚
・コーディネーター、ゼネラリスト、シンクタンクの一翼
(6)啓 発
コンピュータネットワーク(IT)、情報公開と文書管理、学校管理規則等適時に、しかも多方 面から取り上げることにより参加者の興味と関心が高い。今後も偏ることなく適時な内容を取り上 げてほしい。
啓発領域に関するキーワード
・父母負担軽減
・情報公開時代の学校事務
・パソコン活用によるグループワーキング・データセキュリティ
・直接的な児童、生徒との関わりの必要性
・規制緩和と地方分権
・学校改革と学校事務業務の共同実施
・自主研修を通しての資質向上と自己啓発
3.会員の意識調査より
第四次長期研修計画策定にあたり、平成13年度福島事務研研究大会において、「研修・研究を中心とした意識調査」を実施し、以下のような結果を得ることができた。
(1)大会テーマについて
大会テーマは、継続を求める意見が多い。サブテーマに関しては意見が分かれている。地域や内 容理解に差があるようだ。難解で十分理解されないためサブテーマを意識した発表が少ない。
研究テーマ(職務確立・実務・啓発)についてはこのまま継続が60%を占め、現在の研究スタイ ルが定着しているようである。しかし、記述の中に「成果の上に立ち発展した研究になっていない」 との指摘があり今後考えなければならない。
(2)分科会について
仕事上参考になるが過半数を占めた。会員は実務的なものに興味関心を示している。広い視野で 意見を聞いてみたいも3割を占め、視聴型を好む傾向がある。男性は職務課題を主とする第1分科 会が多く、女性は啓発課題を主とする第5分科会参加者が多い。経験年数で見ると5年以下は人事 分野の第3分科会、6〜15年は財務分野の第4分科会、その他は第5分科会が多い傾向であった。 経験年数が多くなるに従い第5分科会のパネラーの発言に関心を示している。
(3)全体会について
平成13年度は長野県飯田市の学校事務改善委員会の代表者による実践報告を企画した。「他県と の違いを感じた」が最も多く、経験年数が増すにつれ「期待どおり」が多くなる傾向がある。福島 の遅れを感じるとともに、飯田市のようになりたいとの願いも推測される。自己の意識改革に視点 をおいた企画だったが、意識が変わったとの回答が6%であったのは少ないと感じた。
(4)県大会以外の研修整備について
福島事務研の研修については、「参加できる研修を増やしてほしい」が多いが、平成13年度より 一般会員も対象とした「夏季セミナー」に関して、参加できることが十分周知されていないと感じ た。
任命権者の研修に関しては、平成12年度より20年経験者研修が増えたが、更に教員と同じような 特定の講座(OAや行政等)を望んでいることがうかがえる。
しかし、大多数が自己研修の必要性を認めているが、「服務や費用」「時間」の問題が障害となっているようである。
4.研修・研究のありかた
これからの学校事務は、「きめ細やかな学習指導や教育の情報化の支援等のため事務部門の強化対応」との新たな役割の遂行と、「特色ある学校」の基本である説明責任を果たすための「開かれた学校」づくり、さらにはそのコンセサスをどう形成していくかのシステムづくりが重要になってくると考える。そのため、学校事務を主体的に担う学校事務職員は「何をすべきか、直ちに間違いなく判断し、すぐに行動できる」能力が今以上に必要とされる。そのためには学校事務を確立し、学校事務職員が経営的視点に立ち、スタッフとしての役割を積極的に果たすような資質を備えなければならない。現「研修・研究基本計画」に沿った任命権者の研修充実をさらに働きかけることはもちろん、それを補完するため県・地区事務研の研修活動も工夫をこらし充実させていかなければならないと考える。その上で現在の研修制度に満足することなく、自己の意識改革を進め自らの手で時間と費用を確保し、自己研修による「プロ意識」も高めていかなければならないと考える。
特に福島事務研として取り組むべき研修計画としては次のようなことを基本としたい。
(1)第三次長期研修計画の未達成部分の継続推進
学校事務標準(案)の定着と活用に向けた研究と共同実践活動
代議員研修(総会時研修)、夏季セミナー、県研究大会による研修・研究の継続推進
(2)地区事務研活動の活性化への支援
専門委員を通じての研修・研究推進
研究大会等の企画による研究の一貫性、広域性、意識改革への啓発
(3)基本領域別研修を中心とした研修・研究推進
組織制度課題 ---- 学校事務確立に向けた実践活動の推進
実務課題 ---- 特に必要とされる能力の重点研修(財務、情報処理)
啓発課題 ---- 社会や学校の変化に対応できる意識の改革(今日的課題)
共通理解 ---- 一般社会や全国の状況を見極めた視点(視野)の確保
5.計画推進のために
教育改革進行中の現在、環境が激変する時期での長期研修計画策定であるため、計画期間を5年〜6年とし、社会変化に対応するよう修正を加えながら計画を推進したい。また、効率良く研修・研究を進め、その成果をタイムリーに反映できるようにするには、それに適した組織編成も考慮しなければならない時期であると考える。
福島事務研発足以来四半世紀を迎えるにあたり、その趣旨をふまえ地区の集合体としての福島事務研ではなく、福島事務研の支部としての地区活動とすべき時が来たのではないだろうか。すべての場面において、個人プレー(職人気質・属人的)からチームプレー(組織活動)へと意識改革を図るべきだと考える。
(1)研究大会等のありかた
・研究大会 ---- 従来の手法を用い、主として地区からの実践発表と研究協議を中心に行う。
(2日間を想定)
・研 修
会 ---- 長期休業中を活用し、テーマ別に午前(全体研修)と午後(分科会研修)に
分け、県内会員の意思統一を図る。それに基づき地区のレベルアップを図る。
(1日を想定)
・総会時研修
--- 地域のリーダーを育成し、学校事務の標準化や改善に関わる理論と技能の研
修を行う。(半日程度を想定)
(2)専門委員会のありかた
福島事務研では研修、研究、調査、広報、IT特別(平成14年度新設)、事務の手引からなる 6つの専門委員会が中心となり活動している。それぞれの担当役割を理解し、個々の委員会とし ての活動は十分達成しているが、委員会同士の横のつながりが希薄となり、考え方に温度差が生 じるような傾向がある。さらに大きく変革する時期を迎え、1つの委員会だけでは十分即応でき ない事例も考えられ、時代の変革により柔軟に対応できるよう、プロジェクトの内容に対応した 柔軟な活動ができるような体制を整えたいと考える。
6.おわりに
福島県教育委員会では平成13年度から10年間を目標とする第5次福島県長期総合教育計画「新世紀ふくしまの学び・2010」を策定した。平成14年度からはそれを受けて、「うつくしま教育改革推進プログラム」(平成14年度〜平成17年度)を策定し、学力の向上、人間性・社会性の育成、学ぶ環境づくり、教育を支える基盤づくりを掲げ本県教育を支援する事業を展開している。
これらの趣旨を十分理解し、目的達成のため学校事務がどのように貢献できるか、そのためにそれを主体的に担う学校事務職員はどのようにしなければならないのか、学校事務像を確立する必要がある。
第四次長期研修計画は、平成13年度より福島事務研の研究委員会が中心となり策定を進めているものである。今回は「研究大会の成果と課題」「会員の意識調査」の分析を通した基礎資料の部分の発表である。更にこれらの結果をふまえ、本年度は計画素案検討・作成まで進めるべく活動を展開している。
しかし、1つの専門委員会だけで検討できることではなく、全ての専門委員会、全役員、全会員の知恵と総意で構築していかなければならないと考えている。また、新たな計画を執行するためには、それに対応した福島事務研組織や運営方法もセットで変えていかなければならない。
東北事務研大会発表にあたり、参加者より忌憚のないご意見をいただき福島事務研の進める「第四次長期研修計画」に反映していきたいと考えている。 |
資料 1
福島事務研 第三次長期研修計画の概要
(平成6年度〜平成17年度までの12年間を対象とする)
大会テーマ 「望ましい学校事務の未来像を求めて」
1 大会テーマの趣旨
教育改革の施策実施に伴う教育環境の変化並びに高度情報化社会、生涯学習社会の到来により、 学校そのものが変革を余儀なくされている。さらにOA化を推し進める技術 革新、そして新しい時代をリードする経営環境の進歩により学校事務も大きく変わろうとしている。
それゆえ学校事務も時代ともに進展する姿を示す必要がある。学校事務の進歩が学校の改善にとって重要な役割を担うであろうことを確信しテーマを設定する。
第三の教育改革は学校に多くの質的転換をもたらすことを表明している。これを実現していく学校は、その経営を革新し、万全な改善策を実施していかねばならない。
このような重要な時期にあって、学校事務職員はより一層学校経営を支援していくよう要請される。そのためには、事務職員の主体的な役割を確立し、実践することが緊急の課題となる。これまでの学校事務を一段高めた学校経営事務に変換していかなければならない理由がここにある。
学校経営の改善をめざす事務職員の先進的な職務内容とその機能を明らかにするとともに、学校事務の望ましい未来像はどうあるべきかを実践を通して追求する。
学校が変わることは、事務の形態や機能も変わってくる。しかし、研究だけでは変わりようがない「研究成果の実現」をあらためてクローズアップし、本会の総力をこれに注がなければならない。
前途多難ではあるが、学校事務の将来につながる大いなる価値がある。
2 前期サブテーマ「学校事務の変革をめざす視点の確立」(平成6年度〜平成11年度)
・学校事務基盤の確立(H6〜H8)
事務吏員・職務・職位・職能分化等の本来の制度と現実との差異を確かめ、学校事務の職務を高 める。
・事務機能の展開(H9〜H11)
他職員の事務の執行状況や自身の果たす役割から学校事務の機能と活動を事務管理及び情報処理 を中心に進める。
3 後期サブテーマ「学校事務改善をめざした共同実践の展開」(平成12年度〜平成17年度)
・経営シンクタンクの形成(H12〜H14)
学校の事務管理及び情報処理に関して、職員が持っているノウハウやソフトを集大成する。学校 事務の情報センターの役割をめざす。
・共同実践の展開(H15〜H17)
県・市町村の教育行政、他団体と協同で学校改善の研究に取り組む体制をつくり、事務研究の成 果を反映する。 (第三次長期研修計画より抜粋)
資料 2 平成13年度 第24回福島県公立小中学校事務研究大会棚倉大会の概要
1.オリエンテーション(県大会のねらいと取り組みについて)
2.分 科 会
第1分科会(職務確立)
テーマ「研修・研究ガイドラインの策定とその実践」(実践研究発表)
第2分科会(総 務)
「学校事務を主体的にすすめるにはどうしたらよいか」
〜学校事務経営計画の作成と実践をとおして探ってみよう〜(研究協議)
第3分科会(人 事)
「効率的事務処理をめざして」〜旅費と休暇処理の効率化〜(研究協議)
第4分科会(財務・学務)
「情報公開時代の学校会計はどうあるべきか」
〜保護者負担の軽減をめざして〜(問題提起)
第5分科会(啓 発)
「教育改革と学校事務職員の役割」(意見交換)
3.全 体 会(共通課題の展開と課題解決に向けて)
「学校」と「地教委」が連携した研究活動と実践
長野県飯田市 学校事務研改善委員会代表による実践報告
4.記 念 講 演
「21世紀の学校事務と学校事務職員」
姫路工業大学教授 清原正義様による講演
資料 3 福島県公立小中学校事務標準(案)について
平成13年2月
1 提案の背景・趣旨
学校教育の複雑化・高度化に伴い、学校事務は従来に増して複雑多岐にわたってきております。しかしながら、その具体的内容については法令や規則等に規定されていないのが実状です。学校運営が効果的に展開されるためには、教育指導部門とともに事務管理部門がその本来の機能を発揮しなければなりません。このことは中教審答申等、一連の教育改革の中で指摘され、学校経営の視点のもとに両部門の効果的連携が重要であると認識されております。また近年、一般社会や地域住民から要求されている開かれた学校(説明責任)の中核をなすと考えられる情報公開にも対応する必要があります。
一方、全国的にも学校事務の職務内容を長期にわたり研究しており、他県においては既に県規模で学校事務職員の職務内容明示が進んでおります。
このことから、学校関係者が学校事務及び学校事務職員の標準的職務について適正に認識し、学校事務を学校運営組織に適切に位置付けることにより、一層円滑に学校運営がはかられることを願い本標準(案)を提案いたします。
2 学校事務標準(案)による効果
この標準(案)はそのタイトルのとおり「学校の事務標準(案)」です。学校経営や運営の重要部門である学校事務を明らかにできる標準(案)による効果は次のようなことが考えられます。
@従来、不明確であった学校事務をを明確化することにより、全教職員の共通認識のもとに分業と協 業の効果的連携を促進することができます。(効果的連携の促進)
A学校ごとにまちまちである校務分掌等の事務内容を示すことにより学校経営基盤が形成され、実務 と組織運営の両面で業務改善が期待できます。(業務改善)
B中教審答申並びに地方分権等の諸改革の中で校長権限が拡大されることに関連し、経営責任を明ら かにするとともに、説明責任も負っていかなければなりません。その具体的推進のために有効です。 (改革の具体的推進)
C学校事務分野を主体的に担うスタッフである学校事務職員の役割と必要な研修が明確になり、職能 と資質の向上を図ることがでます。(事務職員の研修と資質の向上)
D事務研究会での実務や組織運営上での質の高い研究が期待できます。(研究への相乗効果)
3 学校事務標準(案)採用時の留意事項
この標準(案)採用にあたっては、次のことにご留意いただき円滑な学校運営ができるよう配慮 願います。
@学校経営や人事部門における校長固有の事務は含みません。
A学校事務の執行については、関係法規等に準拠するとともに、学校事務の業務内容を考慮して適切 な分担をおこなっていただきたい。
Bこれは学校事務領域の標準を表したものであり、学校事務職員の職務を直接に示すものではないた め、具体的分掌は経験年数、定数、学校規模等を考慮していただき、学校事務職員に過重な負担に ならないよう配慮願います。
C本標準(案)を校務分掌に明示し、組織運営の適正を図るとともに、本標準(案)以外の業務の取 り扱いについては、学校事務の円滑かつ適正な運営に配慮願います。
4 学校事務標準(案)についての基本的な考え方
この標準(案)の作成にあたっての基本的な考え方は次のとおりです。
@基 本 事 項
(1)学校事務の目的は教育諸条件の整備につとめ、教育目標具現化に貢献することです。
(2)本標準の学校事務とは「学校における直接的教育事務以外のすべての事務活動」を表します。
(3)学校事務は学校事務職員のみでなく、学校内全ての職種により分業されるものです。
(4)学校事務職員は、経験と職能に応じて責任と主体性のもとに学校事務を担います。
(5)名称(例示)は「○○(市町村)立小中学校事務標準」が適当と思われます。
A構 成 要 旨
(1)分類は実務に則し社会一般に理解されやすいよう、総務・人事・財務・学務としました。
(2)中分類は、大分類における実務領域を示しました。
(3)内容は、中分類における実務領域の概要を示しました。
(4)分類の基本的な考え方
学校事務は、総務並びに財務に大別できます。実務は、人・物・金・情報の要素に分類でき ます。人・情報に重点を置くものを「総務」に、物・金に重点を置くものを「財務」に位置づけ ました。
・総務領域の人事は事務分野が多いため、「人事」としました。
・児童生徒に関する領域は、学校固有の領域のため、「学務」としました。
・分類にあたっては、全国の状況及び文部省国会答弁等を尊重しました。
福島県公立小中学校事務標準(案)
資料 4 第四次長期研修計画策定スケジュール(概要) 平成13年度 基本方針の検討と策定 研究大会の成果と課題のまとめ・分析作業
平成14年度 計画素案検討と作成
平成15年度 研修計画(案)作成と提示
平成16年度 研修計画(案)修正と承認
平成17年度 第四次長期研修計画趣旨説明と推進
平成18年度 第四次長期研修計画実施
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